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ワンスアラウンドの『現場マガジン』
2023年2月1日号
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皆様、いつもご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ワンスアラウンドで、ビームス みなとみらいのショップマネージャーをしております武島幸宏です。
今週は現役店長の目線で、店舗の今、そしてこれからをレポートする「店長からの手紙」の第11弾をお届けいたします。
現場からのレポートが少しでも読者の皆様のお役に立つことが出来れば幸いです。
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店長からの手紙 【vol.011】
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接客マインドをどう育てるか
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前回のメルマガで、店会議のお話をさせて頂きました。
その中で、当店の下期の目標が「相手本位のマインドを醸成する」で、それを追い続けている、
ということをお伝え致しました。
早いものでもうすぐ下期も終わりますが、今回はその具体的な取り組みと得られた成果についてお話しようと思います。
そもそも何故この目標を立てたか。それは当店がビジョンとして掲げている「血の通ったお店」で
あり続ける為でした。スタッフの入れ替えがあり、長く一緒に働いてきたスタッフが去りました。
新人スタッフが多く入店し、新しいチーム体制になりました。私と親子ほど年齢の離れた彼らに、
どのようにビジョンの中身を伝え、体現していってもらうかを考えた結果、導き出したのが下期の目標だったのです。
目標達成のため、私は店会議のディスカッションで生まれたアイデアを整え、すぐに実行に移していきました。
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接客について考える機会を増やす
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前回の当店の風土(=当たり前になっていること)に、ファッションを楽しむこと、SNS投稿を楽しむことがあります。
それは日常会話のようにスタッフの口の端に上ります。
同じように、接客やお客様の話が、若いスタッフ同士の会話の中に自然に出てくるのが理想でした。
その為にはまず、考える機会を作ることが必要でした。
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@ 褒め合う風土をつくる
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ひとつ目のアプローチは、「お客様から直接のお声が頂けるシステムを活用する」ことでした。
このシステムは、店舗を推奨してくださる内容ですとメールが届くので、
誰でも確認出来る仕組みになっています。
お褒めのお言葉をくださるお客様もいらっしゃいますので、
そこで嬉しいお言葉を頂けていたら、スタッフが店内共有の為に書き込めるコメント欄に、
感じたことを退勤前に記入する取り組みを始めました。
例えば、若手女性スタッフのHが、三十代の男性のお客様から頂いたこんなお言葉
―「Hさんの話し方とか対応とかがとても良かった。
久しぶりに買い物していて気持ちが良いと思いました」
これに対し、スタッフのこんなコメントが集まりました。
- 「Hちゃんは、にこにこ笑顔がいつも感じ良くていいなあと思います!
それがお客様にもしっかり伝わっていてすばらしいっ! D」
- 「男性の方にも心地よい接客が出来ている証拠ですね・・・。素晴らしいです! Y」
- 「H、またグッドコメント頂けてすごいね!スパークしてるな〜!
Hが笑顔で感じが良いのは、傍目にも伝わってくるよね。すばらしい! T」
この取り組みを始めて間もないころに頂いたコメントでしたが、この感想をHに聞いてみると、
「めっちゃうれしいです!何回も見ちゃいます」と嬉しそうに笑っていました。
例えば私が四十代の女性のお客様から頂いたこんなお言葉
―「店員さんの口調が穏やかで商品を押し付けないところがよかった」
これに対して、スタッフからこんなコメントが集まりました。
- 「女性の方にこのようなコメントうれしいですね!
いつも店長はお客様の声をしっかり聴いてサポートしていると思うので流石と思います!
勉強させてもらっています! Y」
- 「店長の接客はとても柔らかく、良い意味でのギャップがあって素敵だな、といつも思っています。
ギャップ萌え笑。 S」
- 「穏やかな口調・・・。わたし早口なので見習います。 N」
実際に私も体感して、Hの気持ちがよく分かりました。他のスタッフが褒めてくれたり、
感想をくれたりすると、本当に嬉しいんですよね。
この「褒められて嬉しい」という気持ちが、若いスタッフの承認欲求を満たし、
もっとお客様が喜んでくれることをしたい、という能動的な行動へと繋がっていきました。
この取り組みを始めてから、スタッフの実名を記載してくれるお客様が増えました。
以前より印象に残るパーソナルな接客が出来るようになったのだと思います。
初めてお褒めの言葉を頂戴したスタッフが、その後も継続的に頂けるようになり、
結果として推奨コメントが特定のスタッフに偏重することがなくなりました。
これは店舗全体で「相手本位のマインド」が醸成されてきた証左だと、
私は手ごたえを感じました。
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A 360度評価
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ふたつ目のアプローチは、前述のシステムとは別の、お客様から頂いた「ありがとう」を
レポートにして共有出来るシステムを活用することでした。
こちらは、以前は私がスタッフの話を聞いて共有していましたが、
下期から毎週金曜日を提出日とし、指定されたスタッフ自身がレポートを書いて共有する
運用に変更しました。
このシステムも、レポートに対してコメントを残すことが出来るようブラッシュアップされていた為、
私のフィードバックだけでなく、特に新人やキャリアの浅いスタッフには感想を返信してもらうように促しました。
その中で先ず、三月に卒業を控えた男子学生スタッフSが共有してくれたレポートをご紹介します。
彼は学生ですが、四年近く当店に在籍してくれたスタッフで、私はその成長をずっと見守ってきました。
『私が入りたての頃、接客を楽しめるようになるきっかけになったお客様との話をしたいと思います。
お客様は六十代のご夫婦でした。旦那様は寡黙な方で、トップスをお探しのご様子。
ニットを数点試着したいとのことでご案内しました。
奥様はご試着の間、外で待たれていましたので、何気なく世間話を始めました。
天気がどうとか、この後のご予定だとか。
そうこうしている間に旦那様のご試着が終わり、どれもご希望に沿わなかった様子。
どうしよう、という奥様と旦那様のお話に私も混ざり、三人で会話が続きました。
接客を続けさせて頂き、複数点ニットのご提案をしましたが、
旦那様はそのうち一点を目に留めてくださり、ご試着されました。
旦那様が出ていらした時、奥様が「それ私も欲しい」と仰いました。
そこで一番小さなサイズを奥様もご試着。夫婦揃って試着室に入るのは初めてだ、
とお二人とも照れ臭そうに笑いながらお着替えになりました。
最終的に旦那様、奥様とお揃いのものを買っていかれました。
お見送りの際、寡黙な旦那様が「ありがとう、楽しかったよ」と仰ってくださいました。
洋服屋さんで働き始めて、初めて人から「楽しかった」と言って頂けた瞬間でした。
満足感と達成感に満たされたことを今でもよく覚えています。
我々の仕事である接客を疎ましく思う方も少なくないと、SNSなどを見ていて当時の私は感じていました。
だからこそ出すぎてはいけない。頼まれたことをやり、聞かれたら答える。
それが私のやっていたことでした。ですが、その日私は、お買い物を楽しみに来ていて、
スタッフとの会話が大切と考えている方がいるということを、初めて知りました。
なんだかんだ四年近くお店に立っていますが、いつでもその時の気持ちを忘れず、
目の前のお客様を楽しませることの出来る、そして自分自身も接客を楽しめる販売員であり続けたいと思います。』
これに対し、若いスタッフからこんなコメントが集まりました。
- 「お客様は、声掛けられるのは嫌だよなあ、と思いながら売場に立っていた少し前の自分にも重なるお話でした。店長からSさんの入社時のお話を少し聞きましたが、いつもお客様と楽しそうにお話している今の姿からは全く想像出来なくて、すごく成長されたんだなあ、と思いました。 H」
- 「お客様と自分自身も楽しめる接客、とても素敵です。僕もSさんのようになりたいです。 J」
私から、「大人の階段昇ったな、S(笑)。素敵なエピソードをありがとう。
お前はいつもお客様本位で売場に立っている。いっぱしの服屋になったなあ、と
目を細めてしまうことが最近よくあります。素晴らしいね」とフィードバックしたところ、
「働くことを楽しまなければと思えたのは、店長が作ったこのお店のおかげです」
とSは返信をくれました。
私や上位者だけでなく、全員が感じたことをラフにコメントしあう360度評価にしたことが、
このアプローチのポイントだったように思います。Sのコメントに私が感じること、
若いスタッフが感じることは異なります。それが共有されることで、私が気付けなかったことも見えてきますし、
私が大切にしたいこともより知ってもらうことが出来ます。
つまり、風通しが良くなったのです。そしていつしか、「あのSさんのレポート、良かったね」や
「あのTのレポート、あまりにもTらしくて笑っちゃったよ」。
そんな会話がバックヤードで聞こえるようになりました。
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ブラさず、焦らず、覚悟をもって
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半期の目標は達成出来そうなところに来ていますが、順風満帆ではありませんでした。
大きな失敗や難しいことも多い半年でした。
しかし、目標をブラさず、上手くいかなくても焦らず、スタッフと向き合ってきました。
心を育てるには、おそらくそれ以外に方法はないでしょう。
向き合って心を育てる―というとなんだか堅苦しく聞こえますが、
そのアプローチの仕方は柔軟であるべきです。ユニークであるべきです。
スタッフの課題、店舗の課題を見つけたら、まず身の回りにある武器の中から、
「有効に活用出来るものは何か?」を見定めるとよいと思います。
幸い、以前に比べて店舗には様々なツール、システムが備わっています。
言い換えれば、持っている資産に目を向けるのです。
この半期、前述のように私は二つのシステムを利用しました。
活用する際、私からのトップダウンではなく、スタッフからのボトムアップを継続的に行えるやり方を選択しました。
そして、常にポジティブな目線で、笑いながら、時間をかけてマインドを育んできたつもりです。
覚悟を持ってやってきて良かった―半期の終わりに、スタッフが自らの接客について
笑顔で話し合う姿を見て、そんなことを思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
明日も売場と向き合いたいと思います。
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これからも現場からのリアルなレポートをお届けします。
どうぞお楽しみに!
ワンスアラウンド株式会社
ビームス みなとみらい 店長
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武島 幸宏
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