ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2023年1月25日号

皆様、こんにちは。
ワンスアラウンドで新卒採用を担当している岡田聖子です。
今週は、『人を育てる』シリーズ最終回、第31弾。
今回は人生100年時代に若手に必要な「ポータブルスキル」について、 スタッフのキャリア面談での事例も踏まえてお伝えしたいと思います。

人を育てる法則 【vol.031】


ポータブルスキルを意識して成長しよう!
弊社では入社1〜2年目にキャリア研修を実施しています。
入社間もないスタッフだからこそ、キャリアに対しての意識をもってもらいたいと思い、 毎年、下記のような話をしています。
「人生100年時代、20歳からキャリアをスタートし、年金受給開始は70歳くらいと仮定すると、 働く期間は50年。一方で企業の寿命は30年と言われている。 このデータから単純計算すると、少なくとも1回は転職する可能性があることになる。 だから、日々の業務で異業種や異職種でも使えるポータブルスキル(持ち運びができるスキル)を意識しておくように!」
入社間もないスタッフたちなので、この話を聞いても深く考えていない様子で、大きな反応はありません。
でも、このタイミングでの研修はそれでいいのだと思っています。

そして、3年目あたりで、個別にキャリア面談を行います。
そこで、様々な業務から得た気づきを話してくれるスタッフがいます。
その気づきの中で、「それはポータブルスキルだね」と指摘して初めて、「ああそうか」とわかってもらえるようです。

ではここで改めて今の日本の労働背景を確認してみましょう。
<日本の平均寿命と企業寿命>
1970年頃は「人生70年」と言われ、日本人男性の平均寿命は69歳、女性は74歳で、 定年は55歳、年金受給開始年齢が60歳でした。平均寿命を参考にし、 定年から5年で年金受給がスタートするこのモデルは、長らく採用されてきましたが、 2013年度の年金制度改正で、男女ともに受給が65歳に延長されました。
そして、2021年の日本人の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳 (厚生労働省)
「人生100年」を想定し、2022年4月に老齢年金受給年齢上限は70歳から75歳に引き上げられました。 70歳定年としても平均寿命まで10年以上もあり、長く働くことが当たり前になりつつあります。
日本政府の「第一回 人生100年時代構想会議」で紹介された「ライフシフト」の著者、 ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授によると、海外の研究で、 2007年に日本で生まれた子供(2023年に16才・高校1年生)の半数が107歳より長く生きると 推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。
第一回「人生100年時代構想会議」 リンダ・グラットン議員提出資料より
(アメリカ カリフォルニア大学とドイツのマックス・プランク研究所の調査結果)
大卒22歳で就職し、仮に年金受給を72歳にした場合、50年もの間、 何かしらの収入を得て生活をしないといけません。雇われる場合は、50年間勤務する必要があります。

一方で企業の寿命は1980代に「企業寿命30年説」が話題になりました。 東京商工リサーチによると、2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年だったそうです。

50年間キャリアを継続しないといけないのに、企業寿命は23年。
一つの企業で勤め上げて定年を迎えるというキャリアプランは成立しなくなっており、 少なくとも1〜2回は時代変化にあわせて転職や、自身を変革するために 新たな学びをしなくてはならなくなりました。
最近よく目にする「リスキリング」という言葉は、 時代変化にあわせてDXに対応できるスキルにフォーカスがあたっているように思います。
しかし、キャリアコンサルタントとしては、 キャリア初期に「ポータブルスキル」を意識する時期も、長い人生の中で必要だと思っています。

<ポータブルスキルについて>
ポータブルスキルとはどんなものでしょうか。
厚生労働省では「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」 と定義しており、「仕事のし方」と「人との関わり方(対人)」を9つに分けています。
この9つのスキルの中で「人との関わり方(社外対応)」は、 「顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成のし方」 とされています。
私が入社3〜4年目のスタッフと面談をした中で、下記のような話をしてくれたメンバーがおり、 まさにこのポータブルスキルへの気づきでしたのでご紹介します。

<Aさんの気づき>
コロナ禍の行動制限がなくなったので、旅行に行き始め、気づいたことがある。 旅行の満足度は、どこに行ったかとか、どんな宿に泊まったかではない。 旅先で「良い人」に会うと嬉しい。満足度はその旅行で出会った人や出来事に左右され、一気に旅の価値があがる。
自分たちのアパレル販売の仕事も同じだと思った。
購入する服を気に入っていただくのは大切だが、販売スタッフとの会話など、 どんな経緯でその商品を買ったのかにより、買い物の満足度が変わると思った。 日々の接客時の1つ1つの会話に、自分なりの感じの良さを 「プラスの思い出」として加えたいと思うようになった。
気づきポイント:商品価値は、モノ+コト・人である

<Bさんの気づき>
店舗立地で顧客層が変わるので、富裕層が多いエリアでは特に言葉遣いには注意している。 しかし、クレームの時はどの立地でも共通することがある。 どんなお客様であっても「相手に目をあわせて丁寧に、でも堂々と。 相手がわかりやすい言葉で聞き取りやすく伝えることが、 丁寧な言葉遣いや腰の低さよりも大事」だと思うようになった。
気づきポイント:対人業務では相手に伝わることが何より重要

2つとも、業種・職種が変わっても持ち運べる考え方で、 まさにポータブルスキルなのだと本人達に伝えましたが、 キャリア研修で教えた言葉すら覚えておらず(笑)・・・。 研修内容を改めて話したら「そういえば、そんな話ありましたね!」と思い出してはくれたようですが、 ポータブルスキルの1つを習得して成長できていることを、 こうやって周りの人が本人に気づかせてあげられる会話の場を持つことの大切さを改めて感じました。


企業のOFF-JT投資は他社との差別化になる
日本はGDPに締める企業能力開発費(OFFーJT)の割合が、 アメリカ・フランス・ドイツ・イタリア・イギリスに比べて非常に低く、その割合は1995年からずっと減少し続けています。
  内閣府「国民経済計算」より
  学習院大学経済学部宮川教授が推計
人生100年時代では、これまで以上に新しいことを学び、新しいスキルを身につけていく必要が出てきます。
広い視野を持ち、変身する力を身に着けるために、まずは自らを知り、そして世界を知る必要があります。

そのためには、若いうちにしっかりと自分の「ポータブルスキル」を認識させて、 現状のスキルをさらに高める「アップスキル」と、現状のスキルを他のものに替えていく 「リスキル」を継続して行い続けることができるような企業内の学びへの支援が、 ますます重要になってきます。

今の日本の能力開発費の低さを考えると、その支援の手厚さは他社と差別化できるものになるでしょう。
人手不足の時代に突入した今、改めてOFF-JTの在り方を考えてみてはどうでしょうか。


なお、弊社では、一人一人のキャリアを支援するための 「伴走型」スキルアップ研修 を数多くご用意しています。
YouTubeでは、無料で学べる 「ワンスアラウンドの接客向上委員会」 の動画が100本以上アップされています。

それらを通じて、現場で働くスタッフ一人ひとりの学びを支援することで、スタッフ自身が成長を感じ、 やりがいをもってそれぞれのキャリアを前向きに捉えていけるようになって欲しいと願っています。

今回で私のメルマガは最終回になります。
約3年の間、お読みいただきどうもありがとうございました。
来期(3月)から新たな内容のメルマガがスタートします。


来週は「変わる時代、変わる店」をお届けします。
どうぞお楽しみに!

ワンスアラウンド株式会社
シニアディレクター

キャリアコンサルタント(国家資格)  岡田 聖子

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