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皆様いつもお読みいただきましてありがとうございます。 ワンスアラウンド顧問の馬場です。 今週は、『マーケットレポート』の第23弾をお届けします。 コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、 自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。 |
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【Market Report vol.23】 |
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「まちづくり」における豊島区の挑戦 前回は、SDGsの開発目標11:持続可能な都市(住み続けられる街づくりを)の視点から、 ①ライフサイクルに応じた循環型まちづくりとしての山万株式会社(千葉県・ユーカリが丘)、 ②共働き子育て世代を支援して「日本一住みやすい街」を目指し、 定住人口と交流人口の増加を目指した流山市(千葉県)の事例をご紹介し、 「活気があり、未来があり、安心感があるまちづくり」にチャレンジしていることを報告しました。 今回は、行政単位としては大きいですが、2014年に都内23区で唯一「消滅可能性都市(※)」の 指摘を受けた豊島区のチャレンジについて、報告したいと思います。 ※「消滅可能性都市」とは、民間有識者組織の「日本創成会議」が発表した全国自治体の将来推計人口により、 2010年から30年後の2040年において、20歳~39歳の若年女性が半減し 人口を維持することが出来ない自治体を指しています。 ●公民連携で稼げる自治体を目指す 豊島区は、1990年代後半は財政破綻の状況でしたが、高野之夫氏が1999年に区長に就任し、 職員の削減、給与減額、施設の統廃合などの痛みを伴う行政改革に取り組みました。 ただ、「あれもダメ、これもダメ」では夢がなくなるので、区民に心の豊かさを持ってもらうために、 区政の中心に「文化」を置き、「文化によるまちづくり」を訴え続け、 区役所庁舎の老朽化に伴う建て直しと跡地利用計画においては、公民連携で取り組みながら(※)、 「稼げる自治体」の実現を目指しました。 ※具体的には、 ■豊島区役所・新庁舎: 民間マンションとの一体型庁舎として2015年開業 ■旧庁舎跡の活用: 8つの劇場を有する「Hareza池袋」を文化の拠点として2020年開業 限られた財政状況の中、「公と民の知恵と力」を結集して両案件を企画立案。 新庁舎は、区有資産(小学校跡地)を活用して財政負担ゼロで建設し、 旧庁舎の跡地は、定期借地により民間を活用し、区有地定期借地料を新庁舎整備費に充当して、 区の財政破綻のピンチを救っています。 |
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併せて豊島区としての明確な都市像を出すために、世界を視野に置いた 「国際アート・カルチャー都市構想」を発表して、 「消滅可能性都市」から「持続発展都市」への転換を目指しました。 |
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●持続発展する都市への取り組みと成果 |
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豊島区のチャレンジから、 見えてきたこと。わかったこと。 豊島区は、池袋という巨大ターミナルを抱え、かつては日本一の人口密度でしたが、 人口は減少の一途で、1997年には約23.2万人と底を打っていました。 そして、75歳以上の単身高齢者世帯割合は日本一、一人当たりの公園面積は23区で最も小さく、 空き家率も多いという状況でした。 しかし、前述のような取り組みにより、 消滅可能性都市の宣告を受けた 2014年1月1日→2021年同日の比較では、 豊島区の人口は、271,643人→287,300人に増加。 そのうち、0歳から14歳の年少人口は、23,382人→26,247人となり、 その割合も8.6%→9.1%へと増加しています。 そして、2014年から5年間で納税義務者数は2万人超の増加があり、区民税収は約43億円増えたのです。 (参考:豊島区住民基本台帳&区HP) まちが変わったことが、人口増と税収増に結びついたのです。 そのまちづくりの着目点(=ターニングポイント)は、次の3点に集約されます。 (1)新庁舎の建て替えと旧庁舎の跡地活用 豊島区は、旧庁舎を民間不動産会社に定期借地で貸し出し、その借地権利料を一括で受け取り、 それにより得た資金を新庁舎の取得費用に充当し、区民の負担を無くしています。 →これは、豊島区だから出来たのではなく、行政単位の大小に関わらず、 どの自治体にも当てはまるのではないでしょうか? (2)まちを元気づけるために公園を開設 豊島区は、「南池袋公園」を始め池袋駅の東西に4つの公園を開設し、公園に次のような機能と役割を持たせました。 ・安心、安全の場所・・・災害時の防災拠点としての機能 ・集う場所・・・ファーマーズマーケット、音楽や文化イベント開催 ・保育園(所)の園庭・・・マンション一角の保育園(所)のバックアップ機能 直近では、豊島区に限らず公園が注目されていますが、これは、2015年に改正された 「都市公園法」が大きく関わっています。 →公園と連動する商業施設としては、 三井不動産が「東京渋谷の宮下公園」「名古屋市の久屋大通公園」跡地に 「RAYARD(レイアード)」ブランドで、 そして直近では、福岡市青果市場跡地を開発した 「ららぽーと福岡」など積極的に取組んでいます。その他でも関東では、 「立川グリーンスプリングス」、「南町田グランベリ―パーク」などに繋がっています。 (3)豊島区が持っている文化資産に着目 豊島区は、明確な将来都市像「国際アート・カルチャー都市」を描いていますが、 その一例として、古くから根付いているアニメ・マンガ文化の魅力に着目し、基軸としました。 →各自治体それぞれが持っている文化資産を掘り起こし、まちの魅力と誇り を再発見することが重要ではないでしょうか? 最後に、 今回は、「まちは生き物で、まちづくりにゴールはなく」 「公と民の知恵と力」が、「まちを変え、勇気と元気を与えている」 ことを改めて確認しました。 豊島区は強いリーダーの元、財政回復に目途つけていた時に、「消滅可能性都市」の指摘を受けましたが、 「明確な都市像」を宣言し、「行政と地元企業そして区民」が連携しながら歩みを進めて克服しました。 前述のサンシャインシティが、「地域と社会に何か面白いことを提供する」という SCのミッションの実現に向けて、社員が豊島区に住み、区民目線で活動する 「トシマージュ」というユニークな社内制度を2020年秋からスタートさせています。 現在15名がエントリーしていますが、思い思いにボランティア活動をしながら、 まちのことや、まちで暮らす人を知り、関わりを持つ活動をしています。 これまで見えなかった地域の現状を知ることが出来、住民ならではのネットワークが築けて、 行政とも連携しながら地域に貢献する力となっているそうです。 「SCの社員がそこに住み、住民目線で客声をキャッチアップ」をしながら、 行政との連携をより強化していくことは、未来のまちづくりに結びついてゆくのではないでしょうか? |
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