ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2022年3月30日号

皆様、こんにちは。
ワンスアラウンドで新卒採用を担当している岡田聖子です。
今週は、『人を育てる』シリーズの第22弾。
今回はオンライン面接や採用工程のAI化が当たり前になった時代だからこそ実施する、 対面での説明会や個別対応の意味を、学生を声をご紹介しながらお伝えしたいと思います。

人を育てる法則 【vol.022】


学生面談で内定辞退率を読む  〜23卒学生面談より〜
3月1日からの採用広報解禁で各企業の23卒採用活動はピーク期を迎えています。 22卒では、説明会参加数は増えたものの、内定辞退が多く最終的な採用人数が厳しかった企業が多いようですが、 弊社も然り。そこで、本年度は2つの対策を行うことにしました。
  1. リアルな会社の温度感を伝える為、対面説明会を増やし、
    若手をOBOGとして参加させる。
  2. 学生のホンネを聴ける個別面談を実施する。
人手が少ない中小企業の採用人事担当者にとっては、いかに採用工程を減らすかが大きな課題で、 採用システム導入でAIによる自動応答を取り入れたり、採用代行として他社にアウトソースを行う企業もあると思います。 しかし、オンラインだらけになってしまった昨今の学生を取り巻く環境を考え、 弊社では社員による対面接触の機会をあえて増やす必要性があると判断しました。
以下、弊社の23卒採用の2つの対策を詳しくお伝えします。


<1:若手社員によるOBOG訪問を兼ねた会社説明会>
会社説明会には入社2〜3年目社員を同席させ、OBOG訪問も兼ねた内容にして実施し、 リアルな先輩の姿を学生に見せるようにしました。
学生に「今日聞きたいこと」を説明会の最初にヒアリングして、聞きたいことを重点的に話してあげることで 「聞きたいことや知りたいことに答えてくれた」と感じてもらえて、 参加満足度がUPするようです。最後に質疑応答をするのでなく、 「順番を変えて」先に聞きたいことを確認するだけなので、所要時間は変わりません。
学生から先輩への質問は、会社の事業内容や仕事内容ではなく、 入社した人にしかわからない「感想」「感覚」についてがほとんどで、 具体的には以下のようなものでした。

〜学生が聞きたいこと〜
・どんな人が多いか
・入社の決め手
・入社前とのGAP
・入社して苦労したこと
・入社して成長していると感じているか

事業内容や仕事内容の説明だけではわからない、 「社内の雰囲気」を先輩から聞きたいという学生のホンネが 伝わってきます。
インターネットで何かを買う時に購入者の「口コミ」「買ってみての感想」を 参考にするような感覚でしょうか。Z世代ともよばれる23卒は、「事実情報」を重視し、 「情報を元に自分で選ぶ」傾向にあると言われますが、その特徴を垣間見る気がします。
説明会では、事業内容や業務内容だけでなく、会社の「雰囲気」を学生に「わかりやすく」 伝えてあげることが大切ですが、オンラインでの会社説明会が増えた今の時代だからこそ、 対面での説明会実施の重要性を改めて感じています。学生からも 「対面での説明会開催は会社の雰囲気を感じられてありがたい」という声を複数聞きました。

<2:面接後の個別面談で1人最低5回の接触確保>
22卒は内定辞退をする学生が多く残念な結果でしたので、23卒では最終面接までに会社理解を深め、 志望意欲を上げたいと思っていました。

アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱した 「単純接触効果」(=ザイオンス効果)では、接触回数が増えることで、警戒心が薄れ、 親近感を持つという実験結果が発表されています。
(ピークは10回まで。それ以上はあまり上がらない。)
ROBERT B. ZAJONC(1968).ATTITUDINAL EFFECTS OF MERE EXPOSURE Journal of Personality and Social Psychology Monograph Supplementより
今まで弊社が1人の学生に接触する回数は、昨年は説明会と2回の面接の計3回でしたが、 今年は一次面接の後に個別面談を加え、弊社が配信するYoutubeの接客力UPの動画視聴を宿題にし、 これを間接接触として、計5回の接触回数を確保しました。
また、説明会や面接時には、採用担当者と若手社員それぞれから各1回は声掛けしたり、 メール返信時にもパーソナルなコメントを一言入れてメールを返すなど、 できるだけ10回の接触に近づくよう心がけています。
このザイオンス効果を狙ったアプローチが内定受諾率に有効だったかどうかは、 23卒採用終了後に改めてお伝えしたいと思います。

希望する学生のみ実施の面談には半数以上の学生が希望してきますが、 内容は「聞かれて困った面接での質問やその対策」「質問の裏にある企業側の視点の説明」 「面接時のアドバイスや就活相談」など様々です。 就活の軸の完成度や、志望意欲などを垣間見ることもあり、今後の内定受諾予測の参考になります。
学生の悩みの中には、コロナ禍前なら大学内での友人との会話で解消されていただろうと思うものも多く、 彼らのおかれた大学環境を知ることで、学生の気持ちを理解する機会にもなっています。
23卒の学生は、コロナ禍で大学1年生の終わりごろからオンライン授業が増え、 3年生になった今でも(主に首都圏では)大学に行くのは週1回程度。 大学の学食は、個食や黙食が推奨され、ワイワイガヤガヤとおしゃべりしながら食事をすることもなく、 部活やサークル活動は制限。友人と話す機会が少ない為、ちょっとした相談が出来ず、 また、たまに会う友人に、就活に関して根掘り葉掘りは聞きづらい。 自分の就活は果たしてこれでいいのか、モヤモヤ・・・こんな様子が伝わってきます。

〜学生からの質問や悩み〜
・何業界を目指していますかと面接で聞かれることが多いが、なぜ企業はそんな質問をするのですか?
・○○と聞かれた時は、どう答えるのが「正解」ですか?
・キャリアセンターにもっと行って相談したほうがいいですか?
・業界は絞ったほうが良いという人と、いろいろな業界に行ったほうが良いと言う人がいるが、 どちらが正しいですか? ・自分は入社した会社で長く働きたいと思っているが、転職が当たり前と言われるので、 転職前提で考えたほうがいいですか?
・エージェント利用は3社がいいと聞くが、それでいいですか?
・エージェントが勧める企業に興味はないが、悪くて断れない。
・営業と販売までは業種を絞れたが、その先が決められない。

面談で、企業側の背景や就活の軸の考え方を伝えると、 「ああそうか」「なるほど!」という相槌が多く、「不安が解消されスッキリした気持ちになった」 と感想をメールで送ってくれる学生も複数いました。 面談をきっかけに違う業界に目を向け始める学生もいて、 時間を掛けた分、採用担当としては残念な気持ちも否めませんが、 それが彼らのキャリア形成に繋がるなら良しとするしかありません。


就活は「自分を知る」きっかけ&キャリア開発の第一歩

「就活は辛い。自分自身のことを知らなくて自己PRが書けない」と嘆く学生もいます。

・自分と他者との比較する経験がコロナ禍で不足している
 =世の中の「普通」がわからない
・「自分」にとっての正しい軸を見定められないまま就活をしている
・不安からやみくもに動いているが、情報過多でかえって混乱


コロナ禍ではこのような学生が増えているのではないでしょうか。
このまま就活を進めてしまうと、今後ミスマッチ(=内定辞退や早期離職)になる可能性もあります。

なぜこの業界なのか、なぜこの仕事なのか、なぜこの会社なのか。
採用面接だけでなく、面談を通じて社会や企業側が持つキャリアの視点を伝えてあげることで、 彼らの就活の方向性が決まることもあります。

学生が面談を通じて自分自身を知り、「得意」を意識することで、その先の能力開発に繋がることもあるでしょうし、 それが選考時から採用人事が出来る内定者のキャリア教育なのではないかと思います。

時間と手間がかかる面談ですが、 内定受諾の予測や、少なくとも理由がわからない内定辞退の低減にはなります。
弊社も試行錯誤中ですが、まだまだ真っただ中の23卒採用では、 コロナ禍の学生との対面での体感や面談工程が必要だと感じていますので、 これも人生やキャリアの先輩としての使命だと思い、時間と手間をかけた採用活動を行っていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

来週は、「新・ショップレポート」をお届けします。
どうぞお楽しみに!

ワンスアラウンド株式会社
シニアディレクター

キャリアコンサルタント(国家資格)  岡田 聖子

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