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ワンスアラウンドの『現場マガジン』
2021年6月23日号
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皆様いつもお読みいただきましてありがとうございます。
ワンスアラウンドが毎週お届けしている『現場マガジン』は、
文字通り我々が運営する《現場》発のホットな情報をお届けするメールマガジンです。
今週は、『マーケットレポート』の第12弾をお届けします。
コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、
自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。
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【Market Report vol.12】
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ショッピングセンター(SC)の未来を考える ―第3回―
こんにちは!ワンスアラウンド顧問の馬場です。
ショッピングセンター(以下:SC)は、常に変化への更なる適応が求められています。
前回は不動産の証券化等に伴い、SCの開発手法も変化して、「所有と運営の分離」が促進され、
現場における運営管理形態もより複雑化している事を述べました。
今回はSCにおける運営管理につきまして掘り下げてみたいと思います。
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「所有と運営の分離」とともに複雑化するSCマネジメント
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■SCの「所有」と「運営」は一体型から分離型へ
現在、国内では3000を超えるSCが営業しています。
それぞれのSCがオープンに至るには、さまざまな歴史、目的、立地、会社組織などの背景がありますが、
その後、立地条件や市場環境の変化、お客様のライフスタイルの変化、競争の激化等が進み、
今日に至っています。
そんな中で、「SCの所有と運営の分離」が進んでいますが、SCの所有者は
所有価値をいかに上げるかを問われ、SC運営者は
SC間競争の激化や、ECとの融合によるオムニチャネル化も見据えた運営の独自性
が問われてきています。
■SC運営マネジメントの変化と複雑化
「SCの所有と運営」が一致しないケースが増えてきたなかで、SCの運営管理におけるマネジメントについても、
下記のように複雑化するとともに、高度化かつ細分化されるようになりました。
・アセットマネジメント 所有する複数のSCの最適化を行う
・ビルマネジメント 所有する施設のメンテナンス等を行う
・オペレーションマネジメント SCの現場オペレーションを日々行う
そのなかで、今回はSCの現場における「オペレーションマネジメント」の変遷について考えてみたいと思います。
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SCにおける運営管理業務の変遷
SCの現場での「オペレーションマネジメント」 ― その業務内容は具体的には、
@事業及び営業企画 A営業管理 B販売促進 C施設及び総務管理 D経理及び出納管理
E災害及び事故対応 Fリニューアル 等、多岐にわたりますが、これらの業務は全て「人」が起点となります。
SCの運営管理は、ディベロッパー(以下、DEV)とテナント間の「パートナーシップ」が重要になりますが、
コロナ禍を受け、SCが生き延びるためには、SCの理念(ミッション)を共有して運営管理をしないと生き残れないことを知りました。
そして、難局を乗り越え、新しい未来を築く上においての運営管理の重要性を再認識しました。
SC運営管理業務の変遷を遡ってみると、
まさにDEVとテナントが一体となってミッションを共有しながら取り組んでいた時代がありました。
量販店や民衆駅ビル(国鉄時代)が中心だった半世紀前の草創期のSCでは、
DEVよりもテナント側がイニシアティブを取りながら、開業時や開業後の運営
を主導していた時代があり、その中心的な役割を果たしていたのが、テナント会(商店会)でした。
テナント会(商店会)の役割
テナント会(商店会)は、組織的には、会長以下、総会、理事会、各委員会、部会を設けて運用されていましたが、
各委員会では、DEVとテナントが一体となり、ミッションを共有し、
販売促進ではユニークな企画やテナント間のコミュニケーション施策の企画立案及び推進機能を担っていました。
テナント総会は年1回開催されましたが、DEVとテナントが一堂に顔を合わせて、
事業報告および決算承認の会議と懇親会が開催されました。宿泊のケースもありましたが、
DEVとテナント間、テナント間同士の情報交換及びコミュニケーションが取れる有効的な場でした。
現在、一部のSCではテナント会が廃止され、DEVがその役割を担っていますが、
テナント会は貴重なコミュニケーションの場として機能してきた歴史があり、
SCによっては現在も有意義な場として機能しています。
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経験したこと、学んだこと
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今回は、テナント会活動において、販売促進及び総務管理関係の中で経験したことを述べさせていただきます。
販売促進分野では、SCの営業にとって最も重要な「集客力アップ」と
各テナントへの「販促支援」の施策を実施しました。
総務管理分野では、SC内で働く店長・スタッフのバックアップをしていましたが、
コロナ禍を体験している今こそ、このような取り組みが求められているのではないでしょうか。
<販売促進分野>
■集客力強化の目玉は、「モノ」ではなく「コト(夢)」でした
営業販促面では、年2回のセールや初売りに加えて、夏と冬(年末)のプロパー販促で大きな山場をつくりました。
景品表示法(公正取引委員会)で認められた限度額を最大限活用した
通称:ガラポンと言われた抽選会を実施し、その目玉景品は、当初の観劇ご招待から、
国内旅行ご招待、海外旅行ご招待へとグレードアップしていきました。
当時は、「少し背伸びをした非日常の体験」という夢を、お客様に届けられたと思います。
■そんな景品から大きく変わったのは、「カード戦略」です
当初は「スタンプカード」から始まりましたが、
やがて「ポイントカード」へと変わっていきました。
そこで運用上問題になったのが、お客様が溜まったポイントを持ち続ける事でした。
前述したように、販促費は1年毎の決算でしたので、未精算ポイントの繰り越し問題が発生し、
ポイント有効期間が決められました。
その後、お客様の囲い込み戦略としての「カード戦略」の有効性が着目され、
DEV・テナント(専門店)ともに、独自のポイントカードを発行。
そして現在は、その多くが「クレジット決済連動型のハウスカード」へと変わっています。
■カード戦略の牽引役はルミネ
カード戦略においては、ルミネが先行したと思います。
カード利用者が、通常時5%OFF、キャンペーン(年数回)時には10%OFFとなる優待制度は、
カード販促戦略に大きなインパクトを与えました。
カード利用者の属性=「氏名」「性別」「年令」「住所」に加えて、
購入実績=店舗、購入日、購入金額等が分かるので、
2005年の個人情報保護法の施行以前は、
・期間を設定して、自店会員の年間買上げ金額順のリストを出すことが出来、
月別の購入額まで分かるので、お客様の購入の仕方を分析しながら
営業諸施策を打つことも出来ました。
・また、自店を起点として、館内の他店ではどこを利用しているのか?という
「買い回り先」も知ることが出来ました。
このように、販売促進分野で、当初は景品が目に見えるお客様還元型でしたが、
ポイントに代わってからは、カード会員受益型に変わりました。
そして、膨大なカードデータがDEV側に蓄積されていきます。
システムは格段と進歩しています。リアルな集客施策やオムニ化戦略に向けては、
このデータを双方で共有しながら、SCのミッションを実現するユニークな施策を見出して欲しいと思います。
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<総務管理分野>
■休館日を活用して、テナント間の繋がりを作っていた
各SCでは、以前は休館日があり、テナント会主催での日帰り「バス旅行会」「スポーツ大会」等が開催されました。
毎日同じ環境で働いているテナントのスタッフ同士が、売場とは違ったお互いの側面を知ることになり、
翌日会った時には、「距離感が一気に縮まっていた」という声を良く聞きました。
コロナ禍を経験した今こそ、SCで働いている
「従業員にとって働きやすい労働環境とは?」を真剣に考え、
SC運営の転換点にして欲しいと願っています。
■テナント会が「賃料改定」の交渉ガイドラインを導く
大阪のあるSCでは、賃料改定時において、会長がテナント会の各部会を招集して、
DEVとの賃料改定のガイドラインを決めていました。
出店契約は、あくまでテナント個々での締結ですが、そのガイドラインに沿って賃料改定をした経験があります。
途中入店でしたが、大阪では歴史のあるSCでしたので、
開業時のDEV・テナント間との信頼関係の強さを感じました。
オムニチャネル化が進みリアル店舗の存在意義が問われる中、
SC運営の根幹をなす「家賃」を含めて、このような場が求められるのではないでしょうか?
■共益はガラス張りで共有
また、東京のあるSCでは、共益費に関して、施設の共用部の電気代、空調費、
施設保守管理費等を全て算出して総額を出し、坪当たり単価を算出し、それを面積按分して共益費を確定し、
それを各部会で報告の上、翌年の共益費として徴収していました。
まさにDEVとテナントのガラス張りの関係が築かれていました。
僅かな事例ですが、コロナ禍を機にテナント会で取組んだ施策の良さを学び、
各SCにおいては自らのミッションを中心にして、
DEVとテナント双方で知恵を出し合いながら見直すことが重要ではないでしょうか。
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<今回のまとめ>
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SCは創設以来、「所有と運営」は一体でスタートしましたが、
2000年前後から、「所有と運営」の分離が始まりました。
そして今、SCの経営理念(ミッション)を中心に据えた
「オペレーションマネジメントの差別化」が求められています。
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SCの運営管理を支えているのは、「ディベロッパー」「テナント」「テナント本部」と「業務委託先
(受付・清掃スタッフ・駐車場スタッフ・警備員等)
」の4者です。
地域のお客様に応えるためには
「どんなSCを目指すのか」という
SCの「経営理念(ミッション)」を
中心に据えて、4者がそれを共有し、
それぞれの役割を果たすことが
改めて求められています。
今回、テナント会(商店会)の役割とともに
SC運営管理業務の変遷を見てきましたが、
SCの経営が分離し始めた時期は、
テナント会が廃止し始めた時期と重なり、
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ここに至るまでには、DEV・テナント間のコミュニケーションが硬直化したこともその背景にあったと思います。
また、定期借家契約が定着して、3本建ての費用(家賃・販促費・共益費)が一本化されて
「総合賃料」が導入されたことも大きく影響しています。
「総合賃料」化に伴い、DEV会社やPM会社は、自らの決断で、販促内容等を決定できますが、
テナント側への情報開示を積極的に実施するとともに、テナント側も、全てお任せではなく、
運命共同体として双方でコミュニケーションを取りながら、前に進むことが重要だと思います。
SCの環境・状況を見据えての決断には、スピード感と一体感が求められ、
SCの現場で日々行われる「オペレーションマネジメント」には、CS・ESを実現するための差別化が求められます。
そして、その判断基準としては、SCの経営理念「ミッション」が重要です。
4者間で、「SCのミッション」を共有していますか?
コロナ禍だからこそ、4者間のコミュニケーションを取りながら、
どういうお客様にどんなサービスを提案するのか?を改めて見直しましょう!
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最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は、元気なSC、話題にあがるSCには何か共通項があるのではないか?
過去を含めて探ってみたいと思います。
次回もよろしくお願いいたします。
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ワンスアラウンド株式会社
顧問 馬場 英喜
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