ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2021年1月27日号


皆様いつもお読みいただきましてありがとうございます。
ワンスアラウンドが毎週お届けしている『現場マガジン』は、 文字通り我々が運営する《現場》発のホットな情報をお届けするメールマガジンです。
今週は、『マーケットレポート』の第7弾をお届けします。
コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、 自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。

【Market Report vol.7】


 コロナ禍の年末年始商戦を振り返る

皆様、本年もよろしくお願いいたします。ワンスアラウンド顧問の馬場です。 昨年はマーケットレポート「市場の風」を読んでいただき、ありがとうございます。今年もよろしくお願いします。
昨年、年末年始の商戦がどう変わるか?をお伝えしていましたが、市場環境は、コロナの感染拡大に伴い、 1月8日に1都3県に緊急事態宣言が発出され、その後7府県にも宣言が拡大されています。
こうした厳しい環境下で、年末年始がどのような結果であったのかをご報告させていただきます。


<密を回避する対策、山場のない年末年始商戦>

昨年10月以降、立ち直りの兆しが見えてきましたが、コロナ感染が首都圏から全国レベルに再拡大し、 大変厳しい年末年始商戦となりました。

12月の売上前年比は、10〜20%減となり、都心と郊外・地方で格差が出ました。
元日休業は、食品スーパー業界がこれを機に従業員の働き方を見据えて舵を切りました
3が日営業は、「緊急事態宣言」発出を前にして大きくダウンしました。


●12月の営業状況

百貨店・SCの各施設では、密を避けて福袋の12月予約&年内販売が多くなり、 併せてセールの前倒しがありましたが、感染拡大に伴う客数減により、 売上は前年比10〜20%の減少となりました。
なかでも、都心立地の施設は特に厳しく、郊外・地方との格差が出ました。
専門店でも、郊外立地店舗が多い企業が好調という構図は変わらず、既存店前年比で見ると、 ユニクロ(EC含)=6.2%増、ワークマン=6.1%増、しまむら=11.3%増となっています。

郊外ターミナルビルの12月商戦の動向を聞くと、
売上高前年比=全館84%、物販85%(衣料品76%)、飲食71%
客数前年比=79.5%
客単価前年比=105%  という結果となり、
客数については、11月中旬より減り始め、12月に入ると平日の入館が更に減り、 客層的には若年層(20代前半)が増えたということでした。
客動向は、前半はクリスマスギフトの下見、男女問わず価格にはシビアで、 アウトレットとの買い回りやネットとの比較など、慎重な様子だったそうです。 一方で、自分へのご褒美として比較的高単価なコスメやアクセサリーのショップが利用され、 好調上位店はコスメが占めたとのことでした。


●元日営業について

ここ数年、元日は休業する施設が増えてきていましたが、 今年から休業に踏み切った施設は少なく、掌握できたのは数施設でした。
一方で目立った動きとして、関東における食品スーパーが、元日に加えて2日との連休、 あるいは3が日を休業とするところが大幅に増加し、従業員の働き方改革を見据えて 「お正月は家族と一緒にゆっくり過ごして貰おう!」という動きが広がりました。

<食品スーパー各社の元日営業状況>

最大手のイオングループは営業しましたが、イトーヨーカドーは路面小型店
舗を中心に26店舗が休業
しました。
元日から3日間休業 ヤオコー、いなげや、サミット
 (3社は前年プラス1日)
OKストア
元日&2日の休業 ライフ、与野フード
元日のみ休業 イトーヨーカドー、マルエツ、コープ、ベルク


●今年から元日休業したSCの状況

正月2日間の営業状況について、昨年3日間と対比してどうだったのか?を、 郊外駅前立地の単館商業施設(大手SM核/年商70億円)と出店者3店舗の状況をお聞き出来ました。
・全館の状況  入館客数=前年対比 52%  売上=同 55%
・店舗A(カジュアル衣料)  売上=同 56.3%
・店舗B(カジュアル衣料)  売上=同 35.9%
・店舗C(雑貨)         売上=同 60.5%
12月中旬に、このSCから約2kmの所に中規模のイオンモールが開業していることから、 その影響が10〜15%程度あると仮定すると、正月3日間営業と2日間営業では、 売上前年比は65〜70%程度と思われます。

また、同様に今年から元日休業となった葛飾区の高架下駅ビルでは、昨年との売上対比は、 物販=75.6%、食品(SM)=76.4%との事でした。
サンプルが少なくコロナ禍の状況のため、一概には言えませんが、 元日休業でも、正月3が日との売上比較で最低70%は確保可能だと思います。

●3が日の営業動向

前述の郊外ターミナルビルに、正月3が日の動向を聞くと
混雑緩和のため福袋販売が無かったことから、2日のバーゲン初日も午前はゆったりした人出で、午後から増えた。
近くに大きな神社があるが、例年多く見られる「破魔矢」を持った初詣帰りのお客様が少なく、初詣の自粛を実感した。
購買傾向は、年末の店頭やECサイトのセール等で下見してから来店され、例年のようなまとめ買いは少なく、 「緊急事態宣言が出そうだし、着る機会もあまりなさそうだから、 冬物はもういいかな〜」という声も聞かれて、食品以外は厳しい状況   ということでした。


<年末年始商戦の販促イベント・キャンペーン>

各商業施設は、知恵を絞って多くのイベント・キャンペーンに取り組みました。
こちらもお客様との接触や密を避けながら、デジタルを活用しての実施となりました。 僅かな事例ですが、次の取組みの参考にして頂けばと思います。


・ステラモール大宮
12月10日〜25日の期間、アパレル支援として「福、ふく、(服)を買って新しい年を迎える」と銘打った 「ステラお年玉キャンペーン」を実施。
抽選で100名様に1万円のギフト券が当たるこのイベントは、密を避ける方法で行われました。 具体的には、会計時にステラモールのポイントカードを提示し、ステラモールのメルマガ配信登録を経て、 元旦に当選者へお年玉として当選通知が届くという、お客様の囲い込みも兼ねたイベントで実施しました。

・高島屋
通販での「1セット3万円の限定おせち販売」に関して、12月24日までの申し込みに対して、 「年末ジャンボ宝くじ(10枚)」プレゼント!(28日〜30日までに簡易書留で別送)  ―3000円でお客様へ夢をプレゼントです!

・小田急 成城コルティ
12月12日から先着100名様限定で、買物代行サイトとタクシー会社で10月に実証実験済のサービスを活用した 「小田急タクシーデリバリーキャンペーン(送料無料)」を実施しました。 これも@WEBで会員登録後 A購入したい商品を注文 B配達時間を指定 Cタクシードライバーが 店舗から商品を受領後、指定時間に指定場所までお届けという内容でした。
対応エリアや、利用可能店舗も飲食・食物販と指定がありましたが、 成城という立地を背景にしたタクシー業界とのコラボレーションです!



<年末年始商戦から見えてきたこと>

ここまで年末年始商戦を振り返ってきましたが、コロナ感染が拡大する中でスタートした2021年も、 DEV・テナントともに客数・売上の低迷に苦慮する状況がまだしばらくは続くと思います。 そんな中で、お客様やテナント従業員の価値観やライフスタイルの変化と、オムニチャネルの拡大に対応しながら、 これからの商業施設が今後考えるべき課題がより鮮明に見えてきました。

■年末年始の新たな営業スタイルの再構築を!

今年の福袋は、「ネット販売」「事前予約」「年内販売」「初売り販売」と多様な対応となりました。 年始休業は、食品スーパー業界が大きく舵を切りましたが、
 ・年末年始の営業時間や元日休業
 ・福袋や年末・年明けのセールの実施方法
 ・立地環境などの地域特性に応じた対応   など
一過性で終えることなく、今年の状況・結果を共有・検証し、多様な視点で検討したうえで、再構築して欲しいと思います。

■地域と従業員に優しい商業施設とは?
  〜企業のミッションが問われる時代〜


「こんな時だからこそ、従業員が家族とゆっくり過ごして欲しい」との願いで実現した食品スーパー業界の年始休業は、
 ・従業員ファーストに考えた営業体制
「小商圏で地域のお客様にできるサービスは?」をテーマに企画検討を重ねて実施した 成城コルティとタクシー会社のコラボレーションは、
 ・異業種も視野に入れた地域との連携による顧客サービス
を考えるひとつのヒントだと思います。

■オムニチャネル下での新たな営業施策へのチャレンジ

コロナ禍でのオムニチャネルが拡大とともに「オンラインとオフラインの融合」は、 営業施策を検討するうえでもはや避けて通れないテーマになりました。
 ・福袋やバーゲンだけではなく、年間営業・販売施策の見直し を前提に
 ・ブロガーやインフルエンサーとの連動などのシームレスなイベント
 ・EC向け撮影スタジオの設置などのテナントサポート
 ・地域コミュニティや行政、ローカルメディアとの連携強化  など、
既成概念にとらわれず、新たなスタイルの構築を目指して欲しいと思います。


最近は、リアル店舗での買い物も短時間で済ませる傾向になっており、 販売員との会話を楽しむ時間も減っており。店舗内が何となく無機質で温かみが感じられない空間に なってきているような気がしています。

そんな中、昨年末にお聞きした心温まる話を最後にご紹介します。

心に響いたソーシャルワーカーのエール交換

緊急事態宣言後も人の移動がなかなか止まらずに、全国レベルで感染者が増加し、 医療従事者への負担が増していますが、年末に東急電鉄の社長にご挨拶に伺った時、 大井町線「旗の台」駅の心温まるお話を聞きました。
この駅の近くには「昭和大学附属病院」があり、看護従事者の皆さんもこの駅を利用されています。
駅員の方々が病院の皆さんに向けて、駅構内に「毎日の仕事への感謝とお礼のメッセージ」を掲示したところ、 後日、逆に駅員の皆さんに対して、「毎日、朝早くからご苦労様です。ありがとうございます。」 との寄せ書きが記載されていたそうです。
日頃は苦情が多く、お褒めの言葉はなかなか頂かない駅員たちは、とても感激したそうです。
ソーシャルワーカーとしてのお互いの「エールの交換」のお話が心に響きました。
この難局を乗り越える為には、このように「お互いを思いやる気持ち」が一番大事なことではないでしょうか?

新年早々に緊急事態宣言が発出され、2021年スタートの出鼻をくじかれた状況となり、 「人の動きを止めるのか?」「営業を優先させるのか?」の二律背反の判断が求められています。

そんな中で、先日NHKの番組で、デザイナーのコシノジュンコ氏がコロナ禍で移動が制約されているが、 「【運動】と言う字は、【運が動く】」と書きます。動くことによって、前向きになり、アイデアが閃く」 と仰っていました。

DEV・専門店各社も、日常の事業運営の中で、「大小様々なリ・セット」を 求められることもあると思いますが、その都度、勇気をもって自らの判断で決断し、立ち止まらずに共に前に進みましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。
2021年も「現場マガジン」をどうぞよろしくお願いいたします。

ワンスアラウンド株式会社
顧問 馬場 英喜


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